【9月10日午後7時25分・SNS発信】
地震発生から4日。札幌市の電気や水道、交通機関などのインフラは全体として回復しつつあります。ガソリンも安定的に供給できる店舗が増えてきました。しかし、コンビニやスーパーの食料品・飲料水はまだ不足しています。
「何もないね・・」
9日夜、自宅に戻るまでの間、車を走らせながらコンビニ店に立ち寄ると、腰を曲げた高齢の女性がため息まじりにつぶやきました。
店内は書籍や文房具、整髪剤、ドリンク剤などはあるものの、飴やガムを除いて食料品は皆無。飲料水もほとんどなく、お酒が若干ある程度でした。空の陳列棚が一面に並ぶ異様な光景です。
「家に食べる物はありますか」と女性に声をかけると、「缶詰めくらいだね」と。「温かい物を食べたいですね」と話すと、うなずいていました。
女性はもう一度「何もないね」とつぶやき、缶ビールとスポーツ新聞をかごに入れました。
あるコンビニの店員は「3~4日で通常営業に戻る見通し」と話していましたが、「入荷の見通しがない」と語る店員がほとんどでした。申し訳なさそうにしている店員を、努めてねぎらいました。
製造工場が稼働し出したため、今朝(10日)は、昨日よりおにぎりや弁当が入荷していますが、まだ量が足りず、すぐに品切になる状況です。発注ができず、入荷した少ない商品をとりあえず並べる店舗が多いようです。
こうしたなか、生産物を届けようと懸命に努力していたのが、卸売市場です。
おととい8日、紙智子参院議員、小形かおり市議とともに、札幌市中央卸売市場を訪ね、市場長が応対してくれました。
6日午前3時8分、水産関係の買出しの業者が少しずつ集まってきていました。そこに大きな揺れが襲いました。
しかし、通常より1時間ほど遅らせただけで、午前5時ころから販売を開始したといいます。食料品のライフラインを担っているという責務を果たそうとしたのです。
青果物も水産物も鮮度が命です。幸い、市場は地震当日の午後1時50分ころに電気が復旧したため、ダメージは最小限に食い止められました。
ちなみに、電気が止まっても、扉を開けなければ冷凍倉庫は3日間、冷蔵倉庫は1週間程度、冷やし続けることができるそうです。
「今日(8日)の青果の入荷量は例年の7割にまで回復している」と市場長。業者の表情は暗くなかったと話し、週明け(10日以降)の入荷に期待を寄せました。
一方、停電や輸送車両の燃料不足の影響で売れ残りもあったそうです。そうした物は翌日に販売しますが、鮮度の違いから大幅に値が下がります。こういうときに、市場のシステムが機能を発揮するといいます。
生産物は委託販売されているので、価格が下落すれば本来、生産者の収入が減ります。そうしたとき、持続的に生産者から供給してもらうために、荷受業者が減収分の一部を補ってくれるのです。
「卸売市場は経済効率だけを求めていません。流通のサスペンション(ばね)の役割を果たしています。90年かけて柔軟に対応できるようにしてきました。出荷者も小売りも消費者も大事にして、誰も泣かせない仕組みがあります」
「量販店(民間)の流通は、市場の代わりにはなりません。何かあれば閉めればいいからです。市場は流通の砦(とりで)です。食料がなくなったら(届かなくなったら)どうするんですか」
話題は通常国会で強行された改正卸売市場法にも及びましたが、「一人暮らしの老人まで食料が行き渡っているか心配」と話す市場長の目線が心に残りました。
今回のような非常時はもちろん、日常的にも安定的に食料を消費者に供給するためには、民間まかせではできません。1次産業の果たす役割の大きさと、関連産業のすそ野の広さをあらためて実感するとともに、持続可能な食料生産・供給の構築が必要だと感じました。
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