北海道の阿寒湖といえばどんなイメージをもたれるでしょうか。雄大な自然、温泉、マリモ、アイヌ文化…。いやいや、「カジノの阿寒湖です」と言ったら、ほとんどの方が頭に「?」マークが浮かぶのではないでしょうか。
釧路市の北の端に位置する阿寒湖は国立公園内にあり、国内外から観光客が訪れています。この阿寒湖温泉街にカジノを誘致しようという動きがにわかに盛んになっています。
この問題について考えようと20日、日本共産党釧路市議団が開いたシンポジウムに参加してきました。反対・推進の立場から4氏が登壇。反対派として大門実紀史参院議員とクレジット・サラ金被害者救済交流団体「釧路はまなすの会」の加藤弘二会長、推進派として蛯名大也市長、「ひがし北海道統合観光リゾートIR誘致協議会」の杉村荘平幹事が発言しました。
公の場でカジノ問題について賛成・反対の立場から議論したのは全国で初めて。いったいどんなシンポジウムになるのかと想像がつかなかったのですが、終えてみると問題点が非常にクリアになり、「やっぱりやめた方がいい」と落ち着いて考えることができました。
推進派のお二人は「地域活性化」のメリットを主張します。
「釧路が衰退し、このままでは経済が崩壊してしまう。カジノは収益性が高く、(観光客が過ごす)夜の時間を補完し、季節に関わらず集客できる。地域の成長戦略のエンジン役になる」(杉村氏)「世界では140カ国でカジノが存在している。(阿寒に滞在する)60万人がもう一泊すれば120万人の宿泊客になる。阿寒の自然、マリモを守るためにもIR(カジノを軸とした統合型リゾート)を活用しよう」(蛯名市長)
それに対して大門議員は「カジノなんて言葉を使うべきではない。とばく場だ」とずばり指摘。売春組織やヤミ金融がはびこる海外のカジノの現状や、パチンコ・パチスロなどでのギャンブル依存症の人が国内で推計560万人、成人男性の9・6%、女性1・6%にのぼるという厚労省調査を紹介したうえで、「人の金を巻き上げることが『経済対策』なのか」と問いかけました。
そして、国政でのカジノ解禁の背景について、「パチンコ・パチスロ機器メーカーや大手ゼネコンなど、関連業界が政治家を巻き込んだどろどろした利権で始まっている」と説明し、地域資源を生かした街づくりへ知恵と力を集めることを呼びかけました。
加藤氏も、クレジット・サラ金被害者を支援した経験を振り返りながら、「国がカジノを認めるのには憤りを感じる」と力説しました。
会場からも「阿寒に住んでいる人はみんな反対。意見を聞いてほしい」「もっと地に足つけた議論を」「若者の雇用創出や高齢者にやさしい街づくりに力を入れてほしい」などの意見が次々に出されました。
「我々もカジノについて100%わからない。でも取り組む価値はある」(杉村氏)と、推進派の方のカジノにかける熱い思いは伝わりましたが、負の側面があまりにも大きく、街づくりとしても経済対策としても効果が期待できないカジノを、そこまでして誘致しなければならない理由は見当たりませんでした。
道内では高橋はるみ知事が誘致に熱心で、釧路市のほか、小樽と苫小牧でも積極的に誘致しようという動きが見られます。
カジノ解禁のための「IR推進法」は、自民・維新・生活の3党の共同提出で今国会での成立をめざしていますが、各党のなかにもさまざまな意見があり、私たちの運動しだいでは廃案に追い込むことも十分可能です。
カジノをつくってみたものの、数年後に残ったものはホールの残骸と「カジノの阿寒」のイメージだった――ということは避けなければなりません。マリモの故郷にふさわしい観光と地場産業を生かした経済・雇用対策にこそもっと力を入れるべきではないでしょうか。
(4月22日付けフェイスブックより)
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