これは、公共交通機関としての役割を放棄するもので、北海道における鉄道事業からの「撤退宣言」にも等しいのではないか――。
JR北海道は一昨日、「JR単独では維持が困難な路線」を正式に発表しました。10路線13区間が対象で、全長は実に1237㌔。現在の営業区間の半分以上、関係する自治体も道内の約4割、37%に及びます。
バス転換のほか、沿線自治体の負担を前提とした鉄道施設の「上下分離方式」を提案していますが、財政難に苦しむ自治体の新たな財政負担は極めて困難です。仮にどの自治体とも合意できなかった場合、札幌を中心とした道央圏以外、道内のほとんどの路線がなくなります。道民の暮らしや経済、産業、町づくりにとって深刻な打撃となり、地域の衰退に拍車がかかることは避けられません。計画の撤回を強く、求めます。
「JR北海道再生推進会議」が2015年6月に出した「JR北海道再生のための提言書」では、「必要な設備投資と修繕を怠ってきた」同社の経営方針に問題の根本原因があると指摘しています。それは、地方路線のみならず、例えば最近になって新札幌駅高架橋で耐震診断を行った結果、全体の97%の橋脚に補強が必要で、「阪神大震災クラスの地震がくれば、崩れる可能性がある」(今年2月の島田修社長の記者会見)ことも判明しています。
そもそも、「JR単独では維持が困難な路線」という論立てがおかしい。公共交通は国や自治体の補助も含めて総体として営業しているものです。道民・国民に支えられてきたことを忘れたのでしょうか。
さらにいえば、JR北海道が発足した翌年1988年度の営業損益533億円に対し、2016年度以降は460億円前後。北海道新幹線の当面の赤字40~50億円を除くと410億円前後で推移する見込みで、発足当時より120億円前後も営業損益は減少しています。JR北海道発足時と比べて、営業距離を2割減(3193㌔→2586㌔)、社員も半減(1万3000人→7000人)させ、道民と従業員に犠牲を押し付けて経費を削減してきた結果が、今回の同社の発表とはあまりにも悲しい。
最近知り合ったJR北海道の社員は「お騒がせしています」と自嘲気味に語り、世間の風当たりを強く感じている様子でした。現役社員も苦しんでいます。
もちろん、同社の厳しい財務状況は理解できます。1987年に国鉄の分割・民営化を強行した国は、赤字分の穴埋めのために6822億円の経営安定資金の利息収入=「運用益」を同社に充当しました。その額は開業当初、498億円ありましたが、バブル崩壊、低金利政策など国政の影響によって、2016年度は226億円(見込み)と半減しています。JR北海道が自力で再建できないのは明らかです。だからといって、それを地方自治体に求めるのは、同社設立の経緯から見ても間違っています。国が責任を持って対処すべきです。
沿線自治体も同じ方向を見つめています。「国に対して諦めないでお願いしていきたい」。今月初旬、菊地葉子道議らと日高管内・新冠町を訪れた際、小竹國昭町長は決意を語りました。
ほとんどの区間が、災害の影響で2年近くにわたって不通になったままの日高線。被災した所も視察しましたが、唖然としたのは、台風で倒れた木製の暴風壁がそのまま線路に放置されていたことでした。地元と協議中だからといって、すぐにでも撤去できるがれきさえ放置する姿勢に、JR北海道の問題の根深さがあると感じました。
放置すればするほど線路が疲弊し、路盤崩落もすすんでいます。それに伴い、並走する国道の安全も危ぶまれる事態です。台風被害を受けた他の路線は復旧工事を行っているのに、財務問題を理由に日高線だけ放置するのは理不尽ではないか。ただちに日高線の復旧工事を行うべきだし、1986年の国鉄改革関連法の附帯決議(「災害復旧に必要な資金の確保について特別の配慮を行うこと」)にそって、国が責任をもって財政措置をとることを求めたいと思います。
経済界からも意見が相次いでいます。道内ホテル大手の社長は「国鉄分割民営化が正しかったのかという政治問題」だと指摘します。来年は分割・民営化から30年。JR北海道の再建をはかるうえでも、いまこそ国の問題として、立ち返って検証すべきときではないでしょうか。新幹線の札幌延伸の再検討も当然、必要です。
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