2015年12月20日。札幌駅前通に市電が走りました。実に42 年ぶりのことです。駅前通を走行するのはわずか400㍍ですが、これにより、市電は中心部をぐるっと一周、ループ化(環状化)することに。この日、私も久しぶりに市電に乗ってみました。
歩道に沿って新設された狸小路停留所から乗車。やってきたのは新型車両のA1200形で、ちょっと得をしたような気持ちになります。車内はすでに混み合っていました。若者から高齢者まで様々な人たちが乗っています。子ども連れの家族の姿も。記念の日にあわせて乗車したと思われる人もいましたが、多くは目的地に向けて乗車する市民でした。
「どうぞ、座ってください」
「いやいや、大丈夫ですから」
「いえ、どうぞ」
「そうですか。では・・」
高齢者に席を譲ったり、他人の子どもに目を配ったりする人の姿が目立ちました。人と人の距離が近いせいか、市電の速度のせいか、落ち着いた時間が流れます。料金(運賃)は170円。一周8・9㌔、約1時間の小旅行でした。
1918年に開業した札幌電気軌道を前身とする札幌市電。人口急増にあわせて郊外まで延伸し、最盛期には総延長25㌔まで張り巡らされます。しかし、地下鉄の開通と延長、そして自動車が増加するなかで“邪魔者”扱いされ、次々と路線が廃止に。そしてついに、1973年には札幌市が市電全廃を提案し、日本共産党の反対を押し切って市議会も可決します。こうしたなかで、「市電を守りたい」と市民運動が巻き起こり、板垣武四市長(当時)も存続を表明。市電が残されることになりました。ループ化される前、逆コの字型を描く路線だったのは、周辺の路線が廃止されるなかで、「一条線」「山鼻西線」「山鼻線」の3路線が残ったからです。。
「しんぶん赤旗」の記者をしていたとき、市電延伸の運動を取材したこともあるだけに、廃止の危機を乗り越え、延伸へ踏み出したのは感慨深いものがあります。市民の力であり、この運動が路面電車に対する先見性があったからこそだと思います。行き先がわかりやすく、乗り降りしやすいという面でも、環境面でも路面電車は優れています。待ち時間が少ないのも魅力です。輸送力という点でも、1日約2万人の市電の乗客をバスで代替すれば、相当な本数のバスが必要です。自動車に乗り換える人が増えれば、さらに渋滞は必至です。路面電車は、自動車を運転する人にとっての“邪魔者”ではなく、道路の渋滞緩和にも実は貢献しています。
ループ化によって、市民にとっても、観光客にとっても利便性が上がり、乗客は増えていくことでしょう。中規模輸送の路面電車の特性を生かすためには、JR駅などとのジョイントが重要です。42年ぶりに駅前通に乗り入れた新路線(都心線)を、札幌駅まで延伸することが不可欠です。JR桑園駅や苗穂駅まで延伸すれば、さらに多くの市民や観光客にとって利便性を実感できるようになると思います。街づくりの将来を考えると、わくわくしますね。
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