アイヌの新年を迎える儀式――アシリパノミに先日、参加してきました。札幌アイヌ協会の主催。札幌の奥座敷・定山渓温泉に近い南区小金湯にある「サッポロピリカコタン」が会場で、初めての参加です。会場のチセ(家)では、伝統衣装をまとったアイヌたちがいろり(アペオイ)を囲んで車座になり、私も輪のなかに入らせてもらいました。
あらゆるものに魂が宿ると考えるアイヌの人たちは、自然の恵みに対する感謝と祈りを欠かしません。儀式では、火の神(アペフチカムイ)が人間界と神々の世界を結ぶ窓口になり、人間が捧げる祈り詞や神酒(トノト)、供物(ハル)を、それぞれの神に届けます。屋外の礼拝所にはクマの神(キムンカムイ)など14の神が祭られていました(年ごとに若干異なるようです)。祭司からは、エサとなる木の実の不作が続いていることから、クマを憂慮する祈りを捧げたとの説明も。先祖に対する供養も行われました。厳粛な雰囲気のなか、約1時間半の儀式は滞りなく終了、貴重な体験をさせてもらいました。
北海道の調査(2013年)で、道内には少なくとも16,000人を超えるアイヌが暮らしています。しかし、社会的、経済的に恵まれない環境におかれているアイヌが多く、低い進学率や所得、低水準の年金などの問題は解決されていません。大学進学率では全体に比べて17.2ポイントも低くなっています。
もともと、独自の言語や文化、宗教を持ち、コタン(集落)を中心に生活していたアイヌ。明治政府は、生活の場としていた山野を全面的に収奪し、アイヌコタンが持っていたサケの漁業権など諸権利を奪ったうえ、強制的に同化政策を行いました。偏見と差別の温床になった「北海道旧土人保護法」(1899年)が廃止されたのはごく最近、1997年のことです。
日本政府も賛成して採択された『先住民族の権利に関する国際連合宣言』(2007年)を受け、2008年には衆参両院の本会議で『アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議』が採択されています。国が主導し、2020年の一般公開にむけて民族共生の象徴となる空間(象徴空間)づくりも白老町で進められています。こうした取り組みは、アイヌ文化を継承していていく役割を担いうるものですが、肝心のアイヌの暮らしは見えてきません。そこには民族の権利回復が置き去りにされている問題があると思います。
日本政府は、アイヌは先住民であると認めつつも、国連の『宣言』で規定されている先住民とは認めない立場です。『宣言』では先住民の個人の権利とともに、集団としての権利を規定していますが、後者については認めていないからです。福祉対策や文化振興にとどまらず、『宣言』に基づき、民族としての権利を全面的に回復することが必要です。
アシリパノミの後の新年会では、若いアイヌも参加して古式舞踏が披露されました。真剣なまなざしに、アイヌ民族の一員としての誇りを感じるとともに、少数者に対する私たち国民の姿勢も問われていると感じました。
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