「コーヒーを飲んでいきますか」
党支部や後援会のみなさんと行動した後、声をかけてもらうことがあります。そんなとき、どうしても時間がないとき以外はありがたくいただくことにしています。ご厚意を無駄にしたくないという思いと、思いがけないお話しや悩みを聞くこともあるからです。
先日、中央区で活動したときのこと。少しだけ時間があったので、ともに行動した女性党員のお宅にお邪魔して1杯ごちそうになりました。しかもお菓子付きで嬉しい!
話題になったのは今後の暮らしについてです。「私ね、これからのことを考えるとすごく心配になるの」。
物腰は柔らかいけれど、いつもはつらつとしている高齢の女性。少し意外な言葉でした。
持ち家でローンの支払いを終えたことから、何とかやりくりできるものの、少ない年金で贅沢はできません。
さらに、今は周囲の支えがなくても自分一人で日々の暮らしを送ることができますが、いつまで続くかわからないという不安があります。将来は自宅を売り払い施設に入ることも考える一方、少ない年金でも入れる特養ホームには限りが。サービス付き高齢者むけ住宅(サ高住)などに入るのは不可能だといいます。
「なんのために一生懸命働いて、子どもを育ててきたのかしら。せめて年金でも入れる施設をもっとつくってほしいわ。森さんが国会に行ったぜひ、取り上げてほしいの」。身が引き締まる思いでした。
この女性が心細い思いをしているのには、もうひとつ理由があります。長年連れ添った旦那さんを病気で失ったことです。私も直後にそのことを知り、とてもショックでした。夫婦で支えあっている姿を見ていたからです。
実はこの日、日程が少し立て込んでいたのですが、そのことも頭にあってご自宅にお邪魔しました。コーヒーをいただいている最中も、テーブルに置かれた旦那さんの遺影が何度も目に飛び込んできました。
帰り際、仏壇の前で手を合わせました。
周囲に飾られた、たくさんの色とりどりの生花が、女性と旦那さんの関係の深さを物語っていました。ふと見ると、オーディオセットの前にLPレコードが。「クラシックを聴くのが夫の趣味だったの」。
旦那さんの供養のためにと毎日、レコードをかけて聴かせているというのです。私は少し恐縮しながら、レコードを少しだけかけてほしいとお願いすると、快く承諾してくれました。
「ジジ・・」。針がレコードに触れると、暖かく、心地よい音色が室内に響きます。でも次の瞬間、悲しみや恐怖にも似た思いも込み上げてきました。この女性が一人、この部屋でレコードをかけている姿が目に浮かんだのです。
「夫と毎日、対話しているんですよ」。若い頃、苦しいとき、自分の分まで頑張って家族を守ってくれた旦那さん。いまでもずっと感謝しているといいます。
「ちょっと古い言葉かもしれないけれど、私にとって夫は『同志』なんです。夫に対して、恥ずかしくない生き方をしたいと思っています」
凛とした表情で語る女性の目にはうっすらと涙が浮かんでいました。
誰一人として同じ人生を歩んでいる人はいません。さまざまな困難を乗り越えて歳を重ね、社会を支える一員として生きてきた人たちが、誇りを持ち続けたまま人生を終えられる社会にしたいと強く思いました。
[6回]
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